
映画『メメント』のあらすじ
主人公のレナード・シェルビー(ガイ・ピアース)は、前向性健忘という記憶障害を抱え、新しい記憶を数分しか保持できない。彼の目的は、妻を殺した犯人「ジョン・G」を見つけ、復讐を果たすこと。
記憶が続かない彼は、ポラロイド写真、メモ、タトゥーを使いながら情報を記録し、手がかりを追い求める。しかし、誰が味方で誰が敵なのかもわからず、真実は混乱とともに揺らいでいく…。
物語は**時間を逆行するカラーシーン(現在から過去へ)**と、**順行するモノクロシーン(過去の回想)**が交互に描かれ、最後にその2つがつながることで衝撃的な真実が明らかになる。
果たしてレナードは本当に正しい復讐を遂げられるのか?
彼が信じる「真実」とは、一体何なのか?
記憶の曖昧さと人間の自己欺瞞を描いた、ミステリー&サスペンスの傑作です。
おすすめポイント
1. 斬新なストーリーテリング
この映画の最大の特徴は、時間の流れが逆行する構成。物語の結末から始まり、シーンごとに過去へと遡っていくことで、主人公と同じ「記憶を失った状態」で真実を追体験できます。
2. 記憶喪失というユニークな設定
主人公レナードは、前向性健忘という記憶障害を抱えており、新しい記憶を数分しか保持できません。彼はポラロイド写真やメモ、さらには自身の体にタトゥーを刻みながら、妻を殺した犯人を追います。この設定がミステリー要素を強め、観客も彼と同じ混乱を味わうことになります。
3. クリストファー・ノーランの巧妙な脚本と演出
本作はノーラン監督の出世作であり、彼の特徴である非線形構成や時間の概念を操る手法が際立っています。緻密に計算された脚本は、2回目以降の鑑賞でさらに面白さが増します。
4. 真実とは何か?という哲学的テーマ
記憶が不確かである以上、”事実”とは何か、”真実”とは何かという問いが浮かび上がります。レナードの行動や選択が本当に正しいのか、観客自身も疑問を持つことになり、深い考察を促します。
5. 二色の映像による巧みな構成
映画は**カラーの逆行シーン(現在)とモノクロの順行シーン(過去)**が交互に展開され、最後にその2つがつながることで、すべてのピースが揃う仕掛けになっています。この映像演出が、観客にパズルを解くような没入感を与えます。
まとめ
メメントは、映画の構成や記憶に関するテーマを楽しみたい人、そして伏線を読み解くのが好きな人に特におすすめです!観るたびに新しい発見があるので、ぜひ繰り返し鑑賞してみてください。
補足、ネタバレ
映画『メメント』の時系列順ストーリー(完全ネタバレ)
映画は逆行するカラーシーン(現在 → 過去)と、順行するモノクロシーン(過去 → 現在)が交互に描かれます。しかし、ここでは時系列順に整理し、レナードの記憶障害発症前からの出来事を説明します。
① 記憶障害が起こる前の出来事
- レナード・シェルビー(ガイ・ピアース)は保険調査員として働いていた。
- ある日、彼の妻が自宅で暴漢に襲われる。レナードは暴漢を撃ち、もみ合いになるが、犯人のもう1人の仲間に頭を殴られ、それが原因で前向性健忘(短期記憶障害)を発症する。
- 警察は「襲ったのは一人だけ」と結論づけるが、レナードは「もう1人の犯人がいる」と確信し、復讐を誓う。
② 妻の死の真相
- レナードの妻は生き延びたが、彼の記憶障害を理解できず、彼の状態が本物かどうか試すために、彼にインスリンを何度も打たせた。
- レナードは新しい記憶を保持できないため、何度も妻にインスリンを打ち続け、結果的に彼自身が妻を死なせてしまった可能性が高い。
- この記憶はあまりに辛すぎたため、レナードは「サミー・ジェンキンス」という架空の人物の話にすり替え、自分の記憶から消し去った。
③ 「ジョン・G」探しとテディの利用
- レナードは復讐のために「妻を殺したジョン・G」を探し始める。
- そこに刑事の**テディ(ジョー・パントリアーノ)**が接触し、レナードを利用して犯罪者を殺させるようになる。
- 実際に、レナードはすでに本物の「ジョン・G」を見つけて殺していたが、記憶障害のために覚えておらず、テディはそのことを秘密にしたまま、レナードを使い続ける。
④ ナタリーとの出会い
- レナードは酒場の女性**ナタリー(キャリー=アン・モス)**と出会う。
- 彼女はドラッグディーラーの恋人をレナードに殺されたことを知りつつも、彼の記憶障害を利用し、自分の目的のために操ろうとする。
- 彼女はレナードに「テディこそがジョン・Gかもしれない」と吹き込む。
⑤ レナード、自分を騙す
- あるとき、テディはレナードにこう告げる。
- 「お前はもう復讐を果たしている」
- 「妻の死の真相を受け入れられないから、ずっとジョン・G探しを続けているだけだ」
- 「ジョン・Gは世の中にいくらでもいる。お前はずっと新しいターゲットを作り続ける」
- レナードはこれを受け入れたくなかった。
- そこで彼は、自分が未来の自分に向けて残すメモの内容を意図的に偽装し、テディこそが「ジョン・G」だと思い込ませるように仕向ける。
- つまり、レナードは自分で「新しいターゲット」を作り出した。
⑥ テディの殺害(映画の冒頭シーン)
- そして映画の冒頭シーン、レナードは記録を頼りにテディを「ジョン・G」として殺害する。
- しかし、それもまた**「本当の真実」ではなく、彼が自分自身を騙して導いた結末**である。
- これにより、彼は再び「ジョン・Gを探す旅」を続けることになる。
まとめ:レナードは永遠に復讐を続ける
- レナードは本当は復讐を果たしていたが、それを認めたくなかった。
- 彼は**「新しいジョン・G」を自分で作り出し、復讐のループに自ら陥る道を選んだ**。
- そのため、たとえテディを殺しても、また新しいターゲットを探し続ける運命にある。
『メメント』の真のテーマ
- 記憶とは何か?
- 記憶がなければ、人は同じ過ちを繰り返し続ける。
- しかし、記憶があるからといって、それが「真実」であるとは限らない。
- 自己欺瞞と復讐の虚しさ
- レナードは自分が妻を殺した可能性を否定するために、自分を騙し続ける。
- 復讐を果たしても、彼はそれを忘れ、新たな復讐を求め続ける。
- 無限ループする人生
- 記憶を失いながらも、レナードは「復讐を求める」という行動パターンを繰り返す。
- 彼は永遠に「真実」を探し続けるが、それが本当に存在するかどうかは誰にも分からない。
結論:映画の最後は始まりであり、始まりは最後である
『メメント』は、単なるミステリー映画ではなく、「記憶」や「真実」の曖昧さを描いた心理サスペンス。時系列を整理すると、レナードが自ら「嘘の真実」を作り出し続けていることが分かる。
結局、彼は**「真実を求めている」のではなく、「復讐を続ける理由」を求めている**のかもしれない。